とんねるちゃんの快進撃

 

まさに爆裂である。

何がって、それはもちろん「とんねるず」の石橋貴明と木梨憲武の芸能界長者番付上位常連コンビの80年代バブル期における活躍である。

 

彼らが「タカ&トシ」ならぬ「貴明&憲武」のベタなヒネリの無い本名コンビ名で学校の昼休みレベルのコントを、

1980年放映開始の勝ち抜きお笑いコンテスト番組「お笑いスター誕生(日本テレビ)」でお茶の間に晒していたのが、高校卒業直 後の事であったが、

それから10年間の80年代を、「オールナイト・フジ」('83)「トライアングル・ブルー」('84)「夕やけニャンニャン」('85)と駆 け上がり、「雨の西麻布」('85)で

洒落のつもりが歌手でも大ヒツト。

この80年代後半からが、オールナイト・フジ時代からの盟友、希代のマーケッター秋元康との快進撃でバブル期へと突入する。

 

そのバブル突入86年のおニャン子旋風では、お ニャン子目当ての全国高校生男子視聴者に向けて、平日の夕方からヤリタイ放題で放し飼い状態

激烈な高卒パワーをフルスロットルで発散。

主役のおニャン子を相手によって公 然とエコひいき罵倒は当たり前で下ネタも連発。

タイマンテレフォン」や「ボブに挑戦」では「ザケンな、テメェ、このヤ ロー!」と視聴者を徹底挑発モード。

業界用語や楽屋ネタも解説無しで使いまくるギョーカイ君な俺様ぶりが、70年代から続くアイドル・バラエティの予定調和なお約束をこと ごとく破壊。

司会者がお飾りとなって、コーナー担当にすぎないとんねるちゃんが番組を完全に喰う展開も、CXダー イシ&港浩一の放置プレイが生んだ

偶然(必然)の産物だったが、ここでとんねるちゃんが5歳〜9歳年下の高校生男子連中を舎弟または敵に回したことは、いずれにしても

その後のバブル絶頂期へ彼らを視聴者として画面にクギ付けにした効果は計り知れない。


こうして勢いを得たとんねるずだったが、本格的なバブル期へと駆け上がる1986年の後半(11月11日)には、先輩ギョーカイ人達の軽〜いノリも手伝っ て、

フジテレビ「火曜ワイドスペシャル」90分枠を単独で与えられるという信じられないチャンスをものにする。

「とんねるずのみなさんのおかげです」というタイトルで、不定期ながらも「PART-1」とうたったところに、CXからの期待の程がうかがえた御褒美だっ たが、

果たしてこの企画が1988年のPART-4まで続くとは、この時点ではまだ彼らも想像だにしなかったであろう。

そして、いよいよ「夕ニャン」放映終了(1987年8月)と同時に始まった「ねるとん紅鯨団」(1987年10月放映開始)は、平日夕 方のガキ相手の大暴れから一転、

バブリーな夜の合コン生中継へと、当時とんねるちゃん同世代の20代後半を中心に、「夕ニャン」でとんねるちゃんを兄貴と慕った舎弟世 代も含めた

参加&視聴を獲得し、「ねるとん」は社会現象となってゆく。

そんなバブリーな時代背景と共に着実に人気を集めた「ねるとん」だが、一方で従来の暴走コントを自他共に望んでいたところ、

翌88年には火曜ワイスペ企画枠だった「と んねるずのみなさんのおかげです」が遂に「CX」「ゴールデンタイム」「冠」「レギュラー」という最強の条件でスタート

ここで生まれた「仮面ノリダー」「保 毛尾田保毛男」「〜によくある風景(withちぇっかるず)」こそは、彼らの20代後期(1990年3月で番組第1期が放映終了)と いう、

まさにバブル絶頂期の1988年からバブル崩壊の1990年までの体を張った黄金期を象徴する伝説の金字塔となった。

 

以降の活躍は、特に楽曲での紅白出場実現やミリオン達成、野猿プロジェクトなど華々しいが、30代からは既にバラエティにおいても

横綱相撲や大名商売の域に達しており、80年代における暴発するパワーとバブルという時代空気の相乗効果が最大限に発揮された

あの頃の輝きには及ばない。

 

冠番組がすべてバブル崩壊と共に失速〜終息していったのも、決して偶然ではないと言えるが、「花の芸能界全部乗っ取らせていただきま す!!」

という傲岸不遜なタイトルの番組が、バブルも人気も頂点だった89年〜90年の彼らの無敵の勢いを示している好例だ。

※番組の熱狂ぶりはコレ

この無意味に溢れるパワー!! 

ダブルのソフトスーツに身を包んだ貴明のイッちゃってる目つきと絶叫連呼の「ファイア!ファイア!ファイ〜アッ!!」

憲武「ぺろん、ぺろ〜ん」「ライブ、ライブ、ラァ〜ッイブ!」

観客も一体となった狂騒のトランス状態こそが、理屈ではもはや説明不能のバブル時代の根拠なき至福感と高揚感!である。

 

80年代に四天王と言われた「さんま・タモリ・たけし・所ジョージ」の所さんさえも、この異様なまでのパワーにはたじろぐ様子が、

通常のお笑いバラエティの空気とは異なる尋常ではない「とんねるちゃん&バブル」の空気を物語っている。

 

そして、貴明(1961年生)・憲武(1962年生)と同世代の野沢直子(1963年生)が加わっての、彼らが発するレッドゾーンブッ チギリのハイテンションに、

阿部寛(1964年生)や、「おかげです」共演の小泉今日子(1966年生)といったアイドルまでもがが否応なく呑み込まれてゆくさま も、

バブル世代ならではの微笑ましい風景だ。




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